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もうひとつの・ そこからの ものがたり

【まえがき】
この小説(と言っていいかと!)は私のお友達であるMegさんが先日の私のつたない物語を読んで
妄想・想像して書いてくれたものです。Megさんとは某SNSで知り合ってはや…7年が過ぎました(たぶん)
お会いしたのはたった一度。でも、私の事をよぉくわかってらっしゃいます(^^ゞ
実は祥子シリーズは私を祥子に置き変えて書いている所があるのですが、今回のこの物語もフィクションであるけれど
ノンフィクションな所もあるのです。
ちょいと…私のより長いですが、本を読む感覚でどうぞ、お読みいただければ幸いです





あれ?
今 すれ違ったヒト 泣いてた?

白髪の混じり始めた年代の人には珍しいな... と 違和感を覚えたせいで
その男のことが 香織の印象には残りやすかったのかもしれない。

わたしの父は人前で涙なんてみせたことないもの
母が亡くなったときも 頑なに涙を見せなかった父のことを思う

「やあ いらっしゃい」
"やよい"の店主は いつになく 声のトーンが低い
いつも 季節のものをさりげなく揃える この店は
突き出しからして 客の心を捉えるのが実に上手い
香織はソレに箸をつけながら ビールを一口
『どうしたんだろう?いつも元気が良いのに』と
少しだけ気になったが
料理の味に心を奪われるうちに そのことは香織の脳裏からは消えていた

『あの子は ほんと食いしん坊だったわよね』
香織がココへまた来てみようか?と思い立ったのは
皮肉にもこの店を紹介してくれた彼女が居なくなった後だった。
祥子とはじめてこの店に来たのはいつだったろう?
高校の頃からの付合いで 何でも話せる
そんな友達のひとりだった。
祥子が居た頃は あちらの店 こちらの店と
よく食べ歩いたものだ。
お互い忙しくなり ここ数年は滅多に通えなくなっていたものの
年に数回はお互いの近況を話せる仲はずっと続いていたのだ。

まったく それにしちゃあ 肝心なお酒の名前を覚えられないっていうのは
どういうのかしらね?
その割に 味にはうるさかったし...
"やよい"の料理は 次々に祥子のことを香織に思い出させる。
逢いたくなれば ついついこの店へ足が向く
けれど 通い詰めるほどだったか?と言えばそうでもなく
香織自身は だんだんと"やよい"からは足が遠のいていったのだ
むしろ祥子とは 新しい店を開拓するのに忙しかった
口コミや雑誌で取り上げられると どちらからともなく誘い合い
方々へでかける 貴重な呑み友達でもあったのだ
世の中の景気がまだまだ良かった頃 今となってはもう遠い昔...

香織が再びこの店に訪れる気になったのはつい半年ほど前だった。

ぬぐってもぬぐっても涙が溢れるのをとめられなかった
『なんで?祥子っっ!!』と 心では叫んでいた
おばあちゃんになっても いろんなトコ一緒に行こうって言ってたじゃないっ!!
嘘つきっ!! あんたがいつも最初に言いだすんじゃない...
自分でも それが理不尽な憤りであることは十分わかっている。
それでも祥子に文句を言うのを止められずに居た。
もしかすると心の中の叫びは 思わず表情に出ていたかもしれない。
ハンカチで目頭を抑え 頬を拭うと ひとつ深呼吸をする。

ひさしぶりにみる年老いた祥子の父親に深々と一礼し 場を辞した。

病院から遠ざかりながら ふと空を見上げたのを覚えている。
抜ける様な澄んだ青空が広がっていた。

「こんなに空は青いのに...」思わずつぶやいていた。

澄んだ青空

『けれど 祥子がいない』後に続く言葉は胸のうちで...

と、街路樹の影から 建物をじっと見つめる男の存在に気づいた。
なんとも言えない表情...
3階にある祥子の病室の方角へ視線がむけられている様に
香織には 何故かそう思えた。
『まさかね』
まるでそれが 心を落ち着けるおまじないででもあるかの様に
もういちど深呼吸をひとつ...
そういう時の香織のクセなのだということに
香織自身はあまり意識した事がない。
それをハジメて指摘したのも 付き合いの長い祥子だったと気づいて
香織は慌てて もういちど深呼吸した。


"やよい"に再び通いはじめたのは 参列者の中にこの店の主人をみつけたからだ
どこかで見た顔だけど 誰だったかな? その時はそう思っただけだった。


「今日はおひたしにしてみたのよ」
そう言いながらテーブルの上に小鉢を並べている
菜の花の好きな香織の母親は 季節が巡る少し前のこの時期に
どこから調達してくるのか?食卓に菜の花料理を一品加えるのが常だ。
「今年もそんな頃なんだね〜」
その時 ふいに 思い出したのだ
「やよいのご主人だわ」思わず声に出した香織に
「なぁに?香織 やよいなんて友達居た?」と 母が尋ねた
「人の名前じゃないのよ」怪訝そうな顔をする母に
「そうじゃなくて 祥子の好きだったお店の名前っ」
まったく紛らわしいわよね と呟きながら「味見、して良〜い?」
と、尋ねるが早いか 香織はつまみ食いをする
「こらっお行儀が悪いっ 嫁入り前の娘がっ」と 母親が注意する側から
「今いくつだと思ってんのー? あたしもう40過ぎたの知ってるでしょ?」
と、開き直った
半笑いの顔のまま 香織が振返ってみると
「ああ 祥ちゃんの...」と言いかけたところで
涙もろい香織の母は それきり喋れなくなってしまった

「祥ちゃん」 人当たりの良かった祥子をみんながそう呼ぶ
祥子は人懐こい性格だが誰にでもそうというワケじゃない
少し苦手な相手が居ても上手に合わせられる
そしてそれは 少しも不自然じゃない
そんなところは祥子の持って生まれた人柄の良さから来るものなんだろう
香織はいつもそう感じていた

相手に気づかせないことが 却って祥子を困らせることもあったくらいだ
「時には態度に出さないからだよ」困る祥子にそう忠告したことだってある
『きっとこの子はそんなコトできないけどね』と思いながらもつい言ってしまう
それほど祥子には 遠慮せずに何でも言えた
合う・合わないには 祥子なりの基準があるんだろうな とは思う。
相手を解っているつもりでも そんなトコロまでは解らない
お互いに丁度の距離感を保っていられる
それが ずっと友達で居られる秘訣なのかもね.. と 香織は感じていたものだ

涙もろいところなんかは 香織の母親とよく似ている
たまに祥子が遊びに来た時など
3人でTVドラマを見ているのに 
香織の母親と祥子が二人で泣いている なんてことはしょっちゅうだった。
そんな高校時代のことまで 思い出して
香織の母は また涙ぐむ
先に母親を亡くしてしまった祥子のことを
香織の母は 娘の姉妹の様に感じていたのかもしれない
「もうっ なんで母さんの方がたくさん泣くのよっ!!」
香織の家でそんなやりとりがあったから
また"やよい"に通ってみようかな?という気になったのだ
それでも月に2回も行ければ良い方で 何度目かに訪れたある時
「香織さん でしたよね?」と ふいに主人に声を掛けられた。
香織は一瞬驚いて「覚えていらっしゃったんですか?」と 聞き返すと
「いつも 祥ちゃんの好きなものばかり注文なさるんで」
二人で通っていたコトを ココの店主はちゃんと覚えてくれていた。
それからひとしきり 祥子のことを店主と話した
サイゴは 二人して泣き笑いになった
「そうそう!! 好きなクセにてんで名前覚えてないんですよね〜」

「また来ます」そう言って通う度
香織は徐々に"やよい"の常連に戻っていったのだ。
もう何年も前 祥子と通っていたあの頃みたいに...
花壇


香織の母が倒れたのは 祥子が逝ってしまってから
わずか3ヶ月後のことだ
香織は 3ヶ月のうちに大切な人を二人も亡くした。
普段から寡黙な父親は 母の葬儀の日にも涙をみせなかった
まるで それが恥ででもあるかの様に。

母のことを一通り済ませ 香織の生活が普段通りになっても
父の泣いている姿をみたことがない。
『この人 感情があるのかしら?』と 考えたことすらある
香織の家では いつも母を通して父親と会話をしていた。
それが突然 お互いに相手を直視せざるを得ない状況になった。
香織は とうとう父親とまともに向き合う日が来たか〜〜と覚悟した。
「今なら 祥子の言ってたことがよくわかるわ」
と 香織は時々 祥子にむけてつぶやく様にもなっていた。

祥子の母が亡くなったときに彼女は 既に病に冒されていただろう
困ったことに彼女の父親は 細々したことを託せる人ではなかった筈だ。
だいぶ歳老いてもいるせいで 火の後始末などとても任せられないと
祥子がよく愚痴っていた。
祥子の父母は 祥子がまだ幼い頃 故郷を離れている
だから近しい親類たちは 祥子の家が父娘ふたりきりになっても
すぐに手を差し伸べられる距離に暮らしてはいなかった。

結果 家の細々したことも 母親の供養のことも 
祥子がすべて取り仕切ることになった。
「世代交代よね」却って淡々とした口調で
香織にむかって弱々しく微笑んでいたのを覚えている

そんな生活にも ようやく慣れてきた頃の祥子は
会えばよく愚痴をこぼしていたものだ。
そういう祥子に「もう二人だけなんだからね」と
父親を気遣う様に何気なく声をかけていたつもりだった。
が、近頃の香織には その頃の祥子の気持ちが良く解るのだ
『ゲンキンなものだわね』
自分が経験してはじめて 同じ様な気持ちになれた。
良く喋る祥子の父親と まったく喋らない香織の父親
違いはあれど 気持ちがわからない という点では全く同じだ。

涙を見せることだけが 悲しむ術ではない
そんなことは解っているけれど
感情のほとんどわからない父親の世話をしながら
母さん よくこんな人と何十年も連れ添ったわね と
感心することが増えたのは確かだ

大丸横


だから "やよい"の入り口ですれ違った あの男の瞳が
少し潤んでいたのを見て 『へー』と思った。
父親よりは まだまだ年下だろうけれど
この年代で 人前で涙を見せるなんて珍しい... そう思ったのだ。


「あさ開です」
店主が 静かに 江戸切り子のグラスを香織の前に置く
『あっ』
そのとき はじかれた様に 叫びが漏れてしまった
どこかにひっかかっていた記憶の糸が 瞬時につながった感じ...
『きっと あの人だ』 
『あの日祥子の病院の帰り 窓を見上げてたのは あの人じゃなかったかしら?』
『きっと そう... 』と、香織が 独り言る


「めずらしいですよね? あさ開」と、尋ねると
「頂き物なんですけどね」と店主が言う
「何年前からだっけ?通う様んなった客が 持って来てくれてね」と 続けた

そういえば 祥子も似た様なことを言っていた
「この前キャンセルした埋め合わせに あさ開ってお酒がお土産ですってさ」
「お土産も嬉しいけど どっか連れてけ〜〜!!」と 酔いにまかせて叫んでいたっけ...
出張帰りの彼がくれたんだとか...
「とか言ってるけど その名前いつ迄覚えていられるかしらね〜?」香織がからかうと
「もぅ〜 彼がくれたものは 忘れないわよ〜」と 
怒りながら笑うのが 祥子のクセだった
本人に言ったことはなかったが。
もう歳だ歳だ 忘れっぽいのよこの頃ぉ〜 と 歳のせいにしていたけど
そればかりではないのだろう と 香織は薄々感じていた
薬の副作用は あらゆるところにでるものだ
祥子の病は 微妙にホルモンバランスにも影響していただろう

祥子の彼氏は もともとクールな人だと聞いていた。
けれど 香織に言わせれば それはクールじゃなくて冷たいだけだ。
いつも自分の愚痴ばかり聞かせて 祥子の気持ちはどうでも良いの?
と、何度憤ったか?知れない。
自分の病のことで なかなか甘えられない祥子にも 
「もうっ そんな時頼らなくてどうするのよっ」と怒った。
けれど祥子は いつも 「心を許されるっていうのも嬉しいの」
なんて言っていた。
そんな時は決まって 「乙女かっ!!「惚れた弱みかー?」とからかったものだ。
だめだ... また涙がにじんで来るじゃない...

ふぅ〜と 軽く息を吸って長く吐く
ここは深呼吸だ。おまじないおまじない

と、ふいに「香織さんは 知らなかったっけねぇ?」
店主の声が 香織を思い出から呼び戻した。
香織が不思議そうに首をかしげてみせると
「そうそう 前にココへ来たとき 入り口ですれ違った人覚えてない?」
「いつ頃のこと?」
「香織さんがまた常連さんに戻ってくれた頃だったから2,3年前かなあ?」
「あ...それって もしかして...」
「そんなに前のこともう覚えてないよねぇ?一瞬だったしねぇ」
「え?あの白髪まじりの人でしょう?」
「そうそう たぶんその人だ」
いつも威勢の良い店主が あの日は何故だか元気がなかったんじゃ...
香織は あの時のことを徐々に思い起こしてみる

「じゃああの時の人 もしかして 祥子の?」
「そうなんだよ 香織さんには紹介してるのか?と思ってたけどねぇ」
そうだったのか... と ひとりごちた途端 もうひとつ思い出したことがあった
「え!?でも あのとき確か... あのひと泣いて...」
そこ迄言いかけたところで 遮る様に店主が再び 話しはじめた
店主も祥子のことで話したいコトがあるらしい
香織はもう少し黙って あさ開を味わうことにする。

祥子は たまにしか彼とは来なかったらしい。
「だって 一人で呑みたい時もあるから」
そういっていたある日 ふらりと一人で現れた。
その日は いつになくペースが早く 
「祥ちゃん どうした?」と尋ねると いきなり泣き出したのだと言う。
はらはらと涙を流すばかりで 何を尋ねても 答えず 
ただ 「なにもかも 言えれば良いのに」とだけ
嗚咽の合間にどうにかそれだけ 聞き取るのが精一杯だったらしい
結局 やよいの店主にも 祥子に何があったのか測りかねていた。

再発したのが解ったのは ちょうどその頃だったのかもしれない
と、香織は思い当たった。

「それから何度かは なんか様子が変だったねぇ祥ちゃん...」
突然嬉しそうな日もあれば ひどく落ち込んだ様子の時もあったりね
そのうち なんとなく 様子が解ったと言う。
思う様に彼に会えない淋しさに沈んでいたかと思うと
出張帰りに空港まで迎えに行って驚かせてやった なんて
いたずらっ子みたいに笑ってたコトもあったんだとか。
案外 友達にも言えないことはあるものだ。
香織が知らないことを 店主は知っていた
祥子にとって この"やよい"は 自分の店という位置づけだったのだろう
そういう場所も必要だったのかもな と 香織は却って納得していた。

でもね、二人で会うというと いつも彼氏の方が話しててね
それも 仕事の悩み 祥ちゃんは 「うんうん」って。
その割に祥ちゃんの方は 自分のこと 何にも言わないんだよ。
ハタから見てると もどかしくてねぇ...
「よく見てるよねぇ〜祥子のことは」
「イヤ、盗み聞きしていたワケじゃないんだよ」
いつだったか 生まれ変わったら何になりたい?みたいな 話をね
「ほ〜ら そんなことまで知ってるじゃない」時々 香織が茶々を入れた
「カウンターに座ることもあるからねぇ」
聞くともなしに そんな会話が聞こえて来たらしい。
そういう祥ちゃんを見ているうちに だんだん腹が立って来てね...
男だったら もっと恋人をダイジにしなよ!!って言ってやりゃあ良かったと思ってねぇ

「祥ちゃんが逝っちまって半年ほど過ぎた頃だっけねぇ?」
今度は その彼の方が 突然"やよい"に現れたのだと言う
それが 香織ともすれ違ったあの日のことだったのだ。
おじさんはね もちろん知ってたよ 祥ちゃんは常連さんだからね
だけどさ 悔しいじゃないか
今更遅いんだよ そう思った店主は
「また二人で来てください」と つい言ってしまったのだそうだ。
「嫌みだったろうねぇ...」

そこまで聞いた香織は
「あの時あの人 泣いてたみたいだった...」と ようやく言うことができた
と、今度は店主が驚いた顔をする
香織だって さっきようやく 病院の外であった男と同一人物だと解って
祥子が話してくれた冷たい彼氏のイメージと 
"やよい"の店先で涙ぐむあの男のイメージが重ならず 戸惑っているのだ
そうか... 解っていやがったのか そうかそうか... 彼氏だもんなぁ
周りからは わからんもんも あっただろうしねぇ...
ふたりの間は ああ見えて 解り合えるもんがたくさんあったのかもしれないねぇ
と 少しばかり ばつが悪そうに言う彼の笑顔が 
いつのまにか いつもの店主の優しい顔になっていた

久しぶりにひとりで現れた祥子の彼氏に「また一緒に来てくださいよ」と
イキオイのまま 嫌みをぶつけてしまったが
その男は 祥子が居なくなってしまったコトをさらりと 店主に話したのだそうだ
そん時になんとなく ソイツの気持ちが解った気がしたんだよねぇ... 

あの日、店主が少し沈んで見えたのは 
祥子を想って呑んでいた男の本心を 垣間みてしまったからだったらしい。

「それでね その次来たときにはさ コイツをね 置いてったんだよ」
コトリ... と あさ開の瓶を 香織の前に置いてみせた
祥ちゃんが空港にいきなり来たときのことを話してってねぇ
男なんてもんは照れ屋だからさ いきなり現れた祥ちゃんをみて
驚くやら嬉しいやらだったらしいけど 思わず知らん顔してたらしいんだよ
そうならそうと 祥ちゃんに言ってやりゃあ良いもんを ねぇ...
なるべく顔に出ない様に 普通のフリしてたんだって言うからさぁ...
そん時 はじめて 祥子ちゃんに土産で買ってきたのが コレだったんだって
だから 同じもんをね 持って来たんだ と 言ってたよ

その話なら 香織もさっきまで 思い出していたところだった
「なぁ〜んだ そうだったの? 祥子その時 そうとう拗ねてたんだから」
「お酒ひとつで誤摩化さないでよ〜って 叫んでたんだから」
嬉しいなら嬉しいって 言ってやって欲しかったわよ ったく男ってヤツは〜っ!!
「今日は香織さんが 叫んでんじゃないの」思わず 店主からツッコミが入る
今夜のご主人は よく喋ること... と 思わず笑みがこぼれそうになった。

「香織さんも もう一杯どう?空いてる様だけど」
そうやって 静かに注いでくれた冷酒を 複雑な想いで味わった。

ほんとね 祥子
態度に出なくたって あんたにはちゃんと彼が解ってたんだね

お父さんとお母さんもそうだったのかしら?
ねえ 祥子?

返事はなかった。

「香織さん その彼氏ね 動物嫌いだったのに 近頃、猫 飼い始めたってよ」
ふふふ と 少し可笑しくなった。
祥子 彼氏とあんまり猫の話できないって言ってたのに
「遅いわよ 今頃っ」

「やっぱり祥子のこと 今でも想ってるのかしらね...」
誰にともなく そう言うと 2杯目のあさ開をくいっと空けた。
「お勘定して」と席を立つ。
「香織さん 今日は早いお帰りだね?」
「いろんな意味で もう"ごちそうさま"だから」
言葉の意味を測りかねて 店主は首をかしげたままだ
「毎度っ」という声を後ろ姿で聞いて
「またね」と手を振りながら "やよい"を出た

西の空に 夕陽がまぶしい。
祥子の好きだったサンセットだ。
あいまいな暗さに 街灯が点灯するのを躊躇う宵待ち時...
街燈

「あら?」逆光を受けて 人影が近づいてくる
すれ違う刹那 白髪の混じった横顔に 香織はおもわず会釈をしてみる
「その後 猫は元気ですか?」と。

見知らぬ人に声を掛けられ ぽかんとしているその男に
「あ、ごめんなさい 知り合いかと思ったものだから...」
そう言い訳すると じゃあ、と言って 再び香織は歩き出す。
男は 遠ざかりつつある香織の後ろ姿を不思議そうに眺めていたが
やがて ふと 沈み行く夕陽に 目を細めると
「綺麗なもんだな...」と 呟いた
男の低い声が 香織の耳にもわずかに届く

「今頃 あなたに話してるわよ 祥子」
香織も 思わず そう呟いて、  
『今夜 わたしもお父さんと 話してみるわね』と 
今度は心の中で 祥子に話しかけていた
今夜なら 祥子のチカラを借りて 寡黙な父の心がわかるかもしれない
そんな風におもいはじめていた

黄昏・明石大橋    神戸の黄昏

 
水面にサイゴの煌めきを残しながら やがて夕陽は沈んで行くのだろう
茜色から藍色へグラデーションしていく景色を眺めながら
香織は家路へ急いだ


                                    Fin




 




Megさん、どうも有難うございました
また よろしくね





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コメント

No title

前回のわさびちゃんの小説で
えッ!死んじゃったの?そんなー(。。)まじかよ~と引き込まれて読んでしまいました
お友達のMegさんとは親友なんですね
お互いのことを良くわかりあってるから
こういう深い物語を書けるんですね、心に伝わって来ました

もう、フィクションなのかノンフィクションなのか分らなくなってきてる~
絶対、ずっとずっと元気でいてよ~(涙)

anelaさん♪

でへ!
私のは小説と言う物でも無いのですがずっと前からちょこちょこと書いてはいまして(^^ゞ
私の癖は子供のころから主人公を悲劇に仕立て上げるのがなんか、胸キュンとなって
良かったのですよ。だからいつも結構悲劇が多かった(^^ゞ

Megさんはきちんと読んでくれてしかもよく覚えていてくれるのです♪
書いた本人は忘れている事もきちんと覚えていてくれていて、私の備忘録となる人でもある(笑)
一回しかお会いして無いとはおもえないですよ、私も。
それこそ以前に書いたワンクリックの奇跡ですわ。
ネットでこんなにいい人と知り合えるなんてね!
もちろんangelaさんや他の、ここで知り合った方々もそうです!

病気を持っている人とかが読んだら悲しいかな?と思いつつ、
世間には悲しい物語を送りだしている人は多いしなにより私としては
嬉しさの方が一杯で、Megさんにも了承を得てアップさせてもらいました。
祥子に自分を重ねている所が有るし(^^ゞ書いたことでヒロイン気どりになってるし(*^_^*)

長いれすになっちゃった<m(__)m>
読んでくれて有難うございました!
またいいのが(自分なりにですが(^^ゞ)書けたら・・・・・読んでやってくださいネ。

P.S.(まだ有るんかい!ですにゃぁ)
種明かし…サプライズで空港へ行ったのは事実なの(*^_^*)



おっと!


「ワンクリックで出逢えた奇跡」でした<m(__)m>
ココ→http://tomo1961.blog84.fc2.com/blog-entry-431.html
見れるかな? どんだけ読ませるのよねぇ!すみません…

えーっ

会ったのは1回だけと聞いて
またまたびっくり
すごい奇跡の人に会ったんだねー
なるほど~

angelaさん♪

そうなんですよ。一回だけ!
出逢ったのが、なんと、ミクシィーのコミュ「阿刀田 高」だったのよ~
あちらでもよく愚痴ったり家の古都暴露したりで、いつもちゃんと、コメくれて。

文章だけのやり取りでもなんとなく人となりはわかりますやん?
でもいざ会うとなったら慎重になる…

出逢うべくして逢った人のおひとりとなりましたわ(^。^)

リレー小説帳...

小学校の4年か5年か?
みんなと架空の物語を作って
リレー小説を書いていたのです。
当時から妄想族で しょーもナイ話をひねりだしては
仲間内で 笑いのタネにしておりました。

わさちゃんが 物語を作るのが得意というのを
知ったのは あっちゃで出会って
割とすぐの頃だったんじゃないでしょうか?
時々 詩を書いたり 物語を載せてくれたり…

ずぶんは それを読んで
「コヤツ 乙女成分120%やにゃ(ΦωΦ)」と
時々に 思ったものです… ハイm(_ _)m ← 白状

今回は わさちゃんの それからの物語に
触発されました。というか、
祥子さんの側にはこんな友達が居てそうな気がする…
という妄想が 膨らんできました。

そんな架空の妄想話を 読んで頂いてありがとうございます


小学生の頃のあの遊びは
「みんな書いて回してね〜」と 言っても
1人減り2人減り ちっとも話が進みません
結局 5,6人いた仲間のウチの 
2人くらいで話をつくり 他が読む という
スタイルに徐々に変っていきました。

そのときの 一緒に話を繫いでくれる仲間?を
また 見つけた様な気持ちになりました。
(コレは 勝手なずぶんだけの気持ちだけども)

『あれ、ココに居たのかー?』
そんな気持ちに戻れた 幸せな時間でした。
お話を考えている間は。

これも縁なら 不思議なもんですにゃあ(ΦωΦ)

あちゃらで出会って 病のことをハジメて聞かされたとき

あなたがこうして生きていてくれて良かった
そうじゃないと 出会えなかったよ

と、コメントしたの 覚えてますか?

そういう人が まだまだ居るんだと思うのです。
この先もね。


これは 架空の物語
祥子さんが居なくなると 周りの人は
困っちゃうのですよ。こんなふうに。

だから 日々を大切に
今日を楽しんで 過ごしましょうぞよん

おお〜 なんて真面目なコメントにゃんだ(ΦωΦ)
タマには エエか〜

あっちもこっちも
ずぶんなんかの 妄想のために スペースを
裂いてもらっちゃって ありがとうございましたm(_ _)m

サイゴまで 読んで頂いて
ほんと ありがとうございました。

(でも こっ恥ずかしいぞぉ〜んm(_ _)m

Megさん♪

いやぁ!得意というものではありませぬ、ただ、書くのが好きなだけで(^^ゞ
それをちょっと心の叫びみたくアップしてしまったりネ、まぁさ、いいやんねぇ、
誰にも迷惑はかけないし(^-^)それくらい楽しんでもさ・・・(^^ゞ

ふとね、昨日妄想してましてん。
私が書いて、Megさんがその裏物語みたく書く。
でも実際はその裏物語の方がどんどん売れて行く・・・なんてね!
売るんかい!ですがぁ(^O^)

しかし、ここで「阿刀田 高」コミュで知り合ったという事が
なんというか、花開いたというか、あーーうまく言えニャイ!
そんな感じ・・・・(どんなやぁ)

こっぱずかしい気持ちはよくわかる!私もしょっちゅうですわ。でも載せたくなるねん(^O^)

あっちでずっと残してくれるんならいいけど消えてしまうには余りにももったいなかったしでね。
また機会あれば頼みます~

そして、そう、読んでくれた方々、有難うございました<m(__)m>
また祥子シリーズできるかもですが(^^ゞ
懲りずによろしくです!(^^)!

No title

何度も読みましたよ~
心にじ~んと来たけど、どんな言葉で表したら良いのかしら・・・
わさちゃん・Megちゃんありがとうe-466
次回を楽しみにしているわe-454

ゆりさん♪

じ~んときてくれたらそれでいいかと(^^ゞ

なかなかこういうのってできないはずなんですがね、できたのがすばらすいぃと
我ながら・・・いや、Megさんのお陰なんですが。
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わさび☆

Author:わさび☆
2004年に乳がんを発症、手術・抗がん剤・放射線治療をしましたが、2009年に骨転移そして、子宮、肝臓にも転移。もう抗がん剤もあとがありません。
どこかにちっぽけな「私」という存在を残したくて……
こんな「私」も生きていたのよ…って。

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